入れ歯(義歯)治療について
入れ歯を入れている患者さんの悩みの多くは、「入れ歯が痛い」「外れやすい」「ちゃんと噛めない」というものです。
抜けてしまった歯を補うために入れ歯を入れているのに、歯として機能していないのは大きな問題です。
体のどこかにいつも違和感や痛みがある状態というのは、本人が自覚している以上にストレスになっています。
ましてや、毎日の楽しみであるはずの食事がおいしく食べられないというのは、本当につらいことだと思います。
入れ歯を入れてから、なんだかイライラするようになったり、笑わなくなった…という話をよく聞きます。
「入れ歯は、痛くて外れやすくてちゃんと噛めないのが当たり前」ではありません。
きちんと原因を取り除いて、快適な生活を取り戻してほしいと願っています。
入れ歯の種類
部分入れ歯
数本の歯が抜けてしまったときに、残っている歯に「クラスプ」という金属のバネを引っかけて、歯を補う方法が部分入れ歯です。
歯は左右から揺さぶられる力に弱いので、バネを引っかけられている歯にかかる負担が大きくなり、その歯の負担能力を考えて設計します。
歯が抜けてしまえば、また新たに部分入れ歯を作り直さなくてはいけませんし、年をとるに従ってあごの骨がやせてきますから、定期的に調整していく必要もあります。
引っかける歯がなくなってしまえば、総入れ歯になってしまいます。
また、部分入れ歯は噛む能力が天然の歯の30%程度と言われ、食事を以前のように楽しめないとおっしゃる患者さんや、金属のバネがかなり目立ちますので、その点を嫌がる患者さんも多くいらっしゃいます。
自費になりますが、バネを金属でなく、歯肉色の樹脂で作ることもできます。
見た目を気になさる方はご相談ください。
歯科医として「今ある歯をいかに残すか」という点で考えると、抜けてしまった歯を単体で補えるインプラントの方が、患者さんの精神的な負担が軽く済み、長く快適に生活できるのではないかと思います。
総入れ歯
歯がとうとう一本もなくなってしまったら、総入れ歯を入れることになります。
保険治療の場合は、プラスチック製の総入れ歯しかありませんが、保険外(自費)の総入れ歯にはいろいろなタイプがあります。
たわみに強い金属床の義歯や、緻密な特別の樹脂;イボカップ(10年たっても臭くなりませんし、精度最高の加工ができます。)で作る方法もあります。
人口歯を長持ちするセラミックで作ることもできます。
あごの骨の状態が良ければ、インプラント治療や、インプラントにホックをつけた義歯ができる場合もあります。
イボカップ義歯(自費)
良い最終義歯を作るために、仮の義歯(治療義歯)を一度作成します。
それをたたき台に、粘膜と治療義歯の間にティッシュコンディショナーという柔らかいおもちのような材料を挟んで、数日~1ヶ月過ごしていただきます。
その間に、ティッシュコンディショナーが歯茎にそってなじみながら、徐々にかたくなってきます。
上で言う肉の薄いところは、圧がかかり、ティッシュコンディショナーが他に移動してうすくなってきます。
うすくなりそうなところは、治療義歯の内面を削合して、痛くならないように、新たなティッシュコンディショナーを足します。
このようにして、形態をととのえてゆき理想の形に仕上げてゆきます。
発音、見た目、機能、すべて良くなったところで、その治療義歯とそっくり同じ形の最終義歯をイボカップでつくり上げます。
結果、(痛くない、良く咬める、発音が良い、臭くならない、精度の良い)入れ歯=イボカップ義歯ができます。
人工歯も、セラミックの歯を使って、ながく使っても摩耗が少ないようにいたします。
イボカップとは、ドイツのイボクラ社製の義歯床素材の商品名で、重合機を含めたシステムの名前です。
固まる時のレジンの収縮を補正しながら固まる、精度のよい、緻密で10年経っても臭くならない、入れ歯ができます。
それを当院では、イボカップ義歯と呼んでいます。
見た目の美しさ
残った歯を守るために
入れ歯を入れることになった今、残った歯や歯ぐきをどう守るかが大切です。
歯が抜けてしまったのには、必ず原因があります。
抜けてしまった歯のところに入れ歯を入れてそれで終わり、ではなく、歯が抜けた原因を見つけて、それを解消しましょう。
そうでないと、また他の歯が抜けてしまったり、歯ぐきや骨の状態が悪くなって、将来もっと苦労することになってしまいます。
病気の原因を取り除いた後は、きちんとメンテナンスをしてと定期検診を受けて、口の中を清潔な状態に保ってください。
抜けてしまった歯を教訓に、もう歯が抜けてしまうことがないように、歯ぐきや骨をできるだけ健康に保つように、一緒に努力していきましょう。
私があなたのためにできるのは、歯科治療を通して健康なお口の環境を作り上げることです。
あなたの努力と私の歯科治療によって、あなたが何かを我慢したりあきらめたりすることなく、快適で楽しい生活が送れるように願っています。