なぜ歯医者さんでの予防が大事か―むし歯
ミュータンス菌
むし歯は「ミュータンス菌」という細菌が主な原因でおこります。
ミュータンス菌が、砂糖から作るネバネバ物質は歯面に強烈に付着する性質を持っており、付着性のない細菌達もミュータンス菌を足掛かりにして、次から次へと歯面に付着していきます。
そして、細菌同士スクラムを組んだ固まり=歯垢=バイオフィルムを形成します。
このバイオフィルムはたくさんのむし歯菌や歯周病の原因菌の住みかとなり、普通のハミガキや薬品では破壊することができない程なので、時々、歯科で磨きとってもらうことをお勧めします。
実は院長の私も、歯ブラシが大事なことは、百も承知していますが、久しぶりに衛生士さんに磨いてもらったところ、歯がつるつるになってあまりに気持ち良いので、これから時々見てもらうことにしました。
バイオフィルム
自分で磨いたつもりでも、ネバネバ(バイオフィルム)が残っていました。
バイキンを少なくすることが、虫歯、歯周病の根本的な治療です!
バイオフィルムという強力なバリアで守られた細菌は、糖分と結合して、歯を溶かす酸をつくります。
まず、歯の表面にあるエナメル質を溶かし始め、エナメル質の下まで達すると、酸に弱い象牙質が急速に溶け、むし歯が早く進行していくのです。
いくらむし歯を削って詰め物をしても、むし歯菌自体がなくなったわけではありません。
定期的にむし歯菌そのものを減らさなければまたむし歯になってしまうのです。
なぜ歯医者さんでの予防が大事か―歯周病
日本人のほとんど(80%以上)は歯周病にかかっていると言われていますが、歯周病(この病気がすすむと、歯ぐきから血や膿が出る、歯ぐきが腫れる、歯ぐきが下がって歯が長く見える、歯がぐらぐら動く、または歯が抜ける、口臭などの症状が出ます)も、歯周病菌をはじめとする様々な細菌が根本原因であり、噛み合わせ、歯ぎしりや食いしばり、食習慣、生活習慣なども密接に関係していますが、それらは誘因でしかありません。ブラジルから出稼ぎに来ているマッサージ師さんが、歯の点検の時期だから、ブラジルに帰りたいとおっしゃられて、びっくりしたことがあります。
歯の土台となる骨を溶かしてしまう
歯周病菌は歯の土台となる骨を溶かしてしまうので、やがて歯茎が歯を支えられなくなって歯が抜けてしまいます。
80歳になったときに残っている日本人の歯は平均で現在、5本前後しかありません。
それに比べて北欧では、80歳の時に残っている歯の数は平均25本です。
「そんなにむし歯はないから」なんて油断して放っていたら、歯周病で歯を全部抜く羽目になってしまった、なんていうことが、日本人では40歳代~50歳代の人でもよくあることです。
歯周病は全身疾患にも関係する
61歳で歯が半分亡くなってしまった患者様が、毎年歯医者に行って大事にしてきたのに次々と抜けてしまった、と嘆いておられる方がございました。
歯医者を虫歯を見つけて詰めるところと思っておられたのでした。
歯医者は、バイキンを減らすところと思って来てくださいね?
ついでに虫歯も治しますが、バイキンを減らすために来ていただきたいです。
歯周病は、歯の土台となる骨そのものを溶かしてしまうだけでなく、全身疾患(とくに心筋梗塞、肥満、高血圧、糖尿病、心疾患、動脈硬化、早産、肺炎、ガンなど)に関連しているということが徐々に明らかになってきており、実は恐ろしい病気なのです。
3ヶ月に1度の健診を
たとえば北欧のフィンランドでは、歯に何のトラブルがなくても3ヶ月に一度歯科医院に行くことが義務づけられています。
どこも痛くないのに歯医者さんで何をするかというと、お口の中の診察と歯のクリーニングをして、むし歯の原因菌や歯周病の原因菌を取り除いてもらっているのです。
意外かもしれませんが、1日3回歯磨きをするけれど歯医者に行かない人よりも、1日1回しか歯磨きをしないけれど、3ヶ月に一度、歯医者さんで歯のクリーニングと、正しい歯磨きの仕方を教えてもらっている人のほうが、将来歯を多く残せるのです。
予防すれば、多くの問題は防ぐことができます
問題が大きくなってしまう前に、ちゃんとクリーニングして、チェックしていけば多くの問題は防ぐことができるのです。
日本人は、病気になれば病院に行って医者に治してもらえばいい。
むし歯になれば、歯医者さんに治してもらえばいいと、とても安易に考えています。
しかし、そうなる前に「予防」がいかに大切かということが、今見直されています。
ちゃんと自分の歯についてカウンセリングを受け、定期的に歯医者に通えば、むし歯になることもありません。
早期発見・早期治療が大切
何かあったとしても、ごく初期の状態で問題を発見して、たとえばむし歯であれば、歯を削らずに済ませることができ、痛い思いをしなくて済みますし、お金も時間も最小限で解決できます。
そういったむし歯や歯周病予防のための『予防歯科』に来られる方が最近は増えています。
何も問題がないからこそ、その状態を維持していくために、定期的に歯科医院でクリーニングをして予防したいのです。
当院の予防クリーニング
削ったりかぶせたりしたくはありません。
私の歯科医院は、どこもこまっていない人が掃除に通うところになりたいのです。
予防歯科では、定期的にカウンセリングと口腔内のクリーニングを行って、まずむし歯を作らないようにし、歯周病菌のコントロールをします。
歯が白くなり、歯ぐきも健康的なピンク色になりますから、笑顔の印象も自然と良くなります。
歯がピカピカ、歯ぐきも美しい…。
予防歯科で健康の維持&爽やかなお口を手に入れれば、気分も変わり、将来の病気の予防にもつながります。
こんなに効果があって、安上がりで、気分のいい健康習慣はなかなかありません。
歯医者さんで定期的に「予防クリーニング」をして、口の健康を保つようにいたしましょう!
それは本当の意味で自分自身を大事にするということであり、実際にあなた自身の寿命や健康度となって跳ね返ってくるのです。
予防中心の歯科医療を行うメリット
- 治療時間
- 治療回数
- 治療時の苦痛
- 医療費(医科の医療費も含めて)
- 生涯で失う歯の数
この5つが全て少なくてすみます。むしろ気持ちよくて通いたいところなのです。
むし歯にしても歯周病にしても、歯は初期に自覚症状が出ないので、ついつい歯科医院に行くタイミングや治療のタイミングが遅れがちです。
しかし、発見が遅れれば遅れるほど、1~5が雪だるま式にかさんでいくのです。
予防しない以上、治療時間も、治療回数も、治療時の痛みも、治療費も、生涯失う歯の数もどんどん増えていきます。
日本では「痛くなったら歯医者に行く」というのが当たり前でしたが、それではあなたが失うものがとても大きいという事実に目を向けてみてください。
口の中を健康に保つと、癌や心筋梗塞、脳卒中、糖尿病などの病気にかかる確率も下がることがわかっています。
一度削ったら、歯は二度と元に戻りません
一度削ってしまったら歯は二度と元に戻りません。
だから、削ったところに詰めものを入れたりかぶせたりするのですが、多くの患者さんも、そして多くの歯医者さんも、そのことをとても簡単に考えてしまっています。
一般的な歯医者の仕事と言えば、人工のものを詰めたり、かぶせたりしているだけです。
すり傷や風邪とは違って、歯を削ってしまったら、厳密言えば二度と完治することはないのです。
だから歯医者さん選びは、あなた自身の問題としてとても大事です。
見かけ倒しではなく、治療の中身、質が問われます。
しかし、された治療が本当にいい治療かどうかは、なかなか患者さんには分からないですし、保険診療による制約も多く、本当にいい治療ができる歯医者はそんなに多くありません。
現在の歯科医の仕事とは何なのか?
日本にはたくさん歯医者さんがいますが、周りの人を見渡してみると、銀歯だらけ、歯周病だらけで、年をとれば総入れ歯が当たり前。
歯医者はこれで、本当に患者さんの歯や健康を守ってきたと言えるのでしょうか・・・。
むし歯ができるたびに歯医者さんで歯を削ることになれば、削る範囲が大きくなり、神経を取らなくてはいけなくなります。
神経を取ってしまうと、毛細血管も取ることになり歯の内部に栄養を送ることが出来なくなって、歯は死んだ状態になってしまします。
実際に、歯科医の仕事の多くは、「以前、他の歯医者で処置されたところの再治療」なのです。
本当にあなたの健康のことを考えるのなら、治療が必要にならなくて済むのが一番です。それには予防するしかありません。
予防に本気で取り組んで、一生、口に関するストレスがない状態をサポートできることが、最も重要な歯科医の仕事のひとつだと思っています。
天然の自分の歯に勝るものはありませんし、口の健康が崩れれば、全身にもいい影響はありません。
これからの歯科医の役割
これからの歯医者の仕事は、むし歯を作らせないこと。歯周病にさせないことだと思います。
戦後の肺結核は、予防で激減しました。結核予防法により、予防が義務づけられたからです。
歯や歯ぐきが健康で、よく噛んで食べることができるというのは、大変重要な意味と役割がたくさんあります。
ただ「食べる」という役割にとどまらず、生命の維持や、老化、生活習慣病防止にも大いに関係しているのです。
食べ物をよく噛んで、唾液をたくさん出すことで、食べ物の消化を助けるだけでなく、唾液腺から分泌されるホルモンが細胞の劣化を防ぎます。
噛むことで、脳や自律神経も適度に活性して、認知症などを防止しているのです。
生涯自分の歯を維持する事で認知症の予防に
調査によれば、入れ歯を入れた人が認知症を発祥することが多いという統計が出ています。
齢をとっても自分の歯がちゃんとそろっている人は、そうでない人よりもかかる医療費が少ないという結果も出ています。
あなたの歯や健康を守ることができるのは、あなただけです。
もちろん私たちが全力でサポートしますが、「歯科医院へ行く」という行動を起こせるのはあなただけなのです。
どうか、歯科にお掃除にきてください!
年をとっても、自分の歯でごはんを食べられる、健康で幸せな未来を手に入れてください。
PMTC・歯みがき指導
PMTCってなに?
PMTCとは、プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニングの略で、歯磨きのプロ(P)による、機械的な(M)、歯(T)のクリーニング(C)です。
当院では患者さんに歯みがき指導をしていますが、時間が経つうちに、だんだんと自己流の磨き方に戻っていってしまいます。また、自己流でどんなに歯磨きをがんばっても、残念ながらすべての部分を、完全にきれいにすることはなかなか、できません。
歯垢や歯石はもちろん、自分ではなかなかとれないバイオフィルム(細菌の頑固なネバネバよごれ)、茶シブやヤニ、苦手なところの磨き残しをきれいにするのが、PMTCという歯と歯ぐきのクリーニングです。
PMTC無料サービス
PMTCは、(健康保険にない概念で、自費ですることべきことなのですが、)私の医院では、無料サービスで、させていただいております。
あまりに気持ち良いので、私の医院に来ていただいたお礼にと思っています。
むし歯菌や歯周病菌がすみついている歯垢は、表面がツルツルのところにはつきにくく、ザラザラしたところにくっつきます。
細菌は目に見えないくらい小さいので、私たちが「充分きれいになったな」と感じる自己流の歯みがきをしても、細菌にとってはすみやすい場所がまだまだたくさん残っているのです。
こうした、歯の表面のザラザラや磨き残しの歯垢を特殊な専用の器械で取って、ツルツル、ピカピカにします。
歯と歯ぐきの境目もきれいに洗い上げますから、歯周病菌が住みにくい環境になります。
茶渋やタバコのヤニ、ワインの着色など、軽いうちにきれいにしましょう!
3~6ヶ月に1回通うだけ!
3~6ヶ月に1回、プロのクリーニングケア=PMTCを受けて歯をきれいにして、次にクリーニングケアを受けるまでの間は、自宅で正しい歯みがきをしてその状態をできるだけキープしてください。
歯科医院は、歯が痛くなってからむし歯治療を受けたり、歯がグラグラになってから歯周病の治療を受ける場所ではなく、むし歯にならないために、歯周病にならないために通う場所になってほしいと願っています。
きちんと予防すれば、一生自分の歯で過ごすことができます。
ブリッジや入れ歯などの不自由さは、それを使った人にしか分からないかもしれませんが、あなたにはできる限り、快適な人生を送ってほしいと思います。
ちなみに、PMTCで痛みを感じる人は、いません。
気持ちよくて、うとうとしてしまう方はたくさんいらっしゃいますが…。
歯みがき指導
当院では、歯みがき指導を行なっています。
「毎日ちゃんと歯みがきをしているのに、どうしてむし歯や歯周病になるんだろう?」「人間は、歯を磨いてもむし歯になるのが当たり前なのかな」あなたも、そんな風に思っているかもしれません。虫歯はできないのがあたりまえです!
ちゃんとお掃除ができていたら、むし歯は出来ません。
むし歯になるのが当たり前なのではなく、歯みがきをしているようで、実はちゃんと磨けていなかった――というのが、本当のところなのです。
磨きすぎて歯肉や歯がすり減ってくる方もあります。歯垢がとれたら、それ以上みがかないでください!
歯みがきの目的
むし歯も歯周病も、原因となる細菌が口の中にすみついているから起こります。歯みがきの目的は、むし歯や歯周病の原因菌を落とすことです。
(決して、歯磨き粉をたくさんつけて、口の中をアワアワにしてすっきりさせることが目的はありません!)
むし歯の原因菌は空気を好みます。
だから、歯の表面にくっつきます。ツルツルしたところにはくっつきにくいので、歯の表面のザラザラしたところや、むし歯治療をした詰め物やかぶせ物の段差のところ、歯と歯が重なっているところなどに固まってくっつきます。(これを歯垢=プラークと言います。)
一方、歯周病の原因菌は空気を嫌います。だから、空気の届きにくい歯と歯ぐきの境目に入り込んで、より空気の届かない奥へ奥へと入っていきます。
こういった習性をもつむし歯菌や歯周病菌のかたまり、歯垢を落とすのが歯みがきの目的ですから、歯ブラシの選び方や磨き方にもポイントがあります。
歯みがきのポイント
1.歯ブラシのヘッドの大きさ
歯ブラシのヘッド(歯ブラシの毛がついている先端の部分)は、大きなものよりも小型なものを選んでください。
歯と歯が重なっているところや歯と歯ぐきの境目という、狭くて小さいところを磨くわけですから、ヘッドは小さい方が細菌を落としやすいです。
2.歯ブラシの毛の硬さ、長さ
歯ブラシの毛の硬さは、普通の硬さのナイロン毛が最適です。硬い毛は、ちょっと力を入れすぎてしまうと、歯や歯ぐきを傷つけることがありますし、細かいところまでていねいに磨きにくいので控えてください。
歯ぐきの炎症がある場合には、やわらかめの歯ブラシを使って、炎症が治まってきたら普通の硬さの歯ブラシに代えてください。
3.歯ブラシの握り方
歯ブラシを、力を入れてしっかり持ってしまうと、奥歯の奥まできれいに磨けません。
また、強い力で(腕で)ゴシゴシと磨いてしまうと、毛先が広がって歯垢をとることができません。
また、強く磨いて歯ぐきや歯根を擦り減らせてしまうことがあります。歯ブラシは、軽く鉛筆を握るようにゆったりと優しく持ってください。
4.鏡を見ながら磨く
鏡を見て、今自分がどの歯をどんな風に磨いているか、じっくり見ながら歯を磨いたことがありますか?
これからは時々、鏡で自分の歯を見ながら歯を磨いてみてください。よく見ると、歯は平らな板ではなく、微妙なカーブがあったり、重なっているところがあったり、大きさが違ったりして、意外に個性的です。
前歯に比べて奥歯のこの辺りは磨きにくいなとか、唇が邪魔だなとか、そういった新しい感想をもつかもしれません。そういったところに、歯垢がたまりやすいのです。
奥歯の外側を磨くときは、口を少し閉じてほっぺの緊張をなくして磨いてください。
5.小刻みに磨く
あなたがブラシを動かす距離は、どれくらいでしょうか?
3~5mmくらいの細かい動きで歯を磨いてください。早く磨き上げようとして大きく動かすと、肝心の歯間が磨けないだけでなく、出っ張ったところが歯肉、歯ともにすり減ってしまいます。
歯と歯の間、歯と歯ぐきの境目、こういったところを重点的に、歯ブラシを細かく細かく動かして、歯垢を取り除いてください。
当院では、定期検診のときに歯みがき指導をしています。
歯の磨き方も日進月歩で、20年前と今とでは、推奨されている磨き方がまったく違います。
あなたの今の磨き方が本当に適正か、一度確認してみてください。
歯科医院で定期検診を受けて、自宅で正しい歯みがきができれば、むし歯や歯周病になる可能性は低くなります。